研究概要 |
元来、建築構造物の形態は建設以後変化しない。しかし、近年、建築構造物への要求は大きく多様化しており、開閉式ドームなどの可変式の建築が登場するようになってきている。このような傾向は、通常のビル建築以上に、ドーム構造や展示施設などの特殊構造をもった大規模集客施設、いわゆる空間構造物と呼ばれる建築構造物において顕著である。しかし、従来の開閉式ドームなどに代表される可変式構造物は既存の重工業的な技術の延長であったため、空間構造本来の軽量性という特徴を失ってしまっている。 本研究では、空間構造物本来の特徴である軽量性を損なわず、様々な荷重、用途条件下で最も適した構造システムを形成するスマート構造としての可変空間構造を開発することを研究の目的としている。 本研究は全体を3つのphaseに分けて行なう。 phase1.既往解析プログラムの発展。基本モデルの作成。 phase2.解析システムの確認、張力安定トラスモデル載荷、振動実験 phase3.可変制御モデルの作製と構造実験 初年度(12年度)は、代表的空間構造である立体トラス及び膜構造に着目して、既に開発している立体トラス構造の弾性逆解析プログラムを2次元構造物である膜構造へ適応するため、理論構成及び解析プログラムを発展させた。さらに、膜構造の自己モニタリングを行なうための低剛性センサーを開発する必要があるため、PVDF(ポリフッ化ビニリデン)を膜構造のセンサーとして用いるための基礎的な実験を行ない、膜面に貼られたPVDFセンサーの基本的な確認した。 13年度は、膜構造の低剛性センサーの開発を進め、実際の膜構造に対してPVDF(ポリフッ化ビニリデン)によるセンサーを貼り付け、基礎的な観測データを得た。結果として、実験室環境とは比較にならないノイズにさらされていることが判った。また、安定的な観測を行うためにはコンピュータに依存した測定システムを見直し、チャージアンプによるアナログ的な積分回路を組み込む必要があることが判り,積分回路の試作も行った。また,実大張力安定トラス構造の載荷実験を実施した。 14年度は13年度の実大実験結果を解析システムにより確認した。さらに,ケーブルドームモデルによる簡易実験により,解析システムの確認を行った。 15年度は可変制御モデルとして,形状記憶合金(バイオメタル)による可変長部材を用いたモデルを作成した。ある程度の応力制御が可能であることを確認したが,製品化されている部材の径が細いため,建築構造としての十分な応力を得ることが出来ず,今後の課題となっている。
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