研究概要 |
海洋空間利用を目的とした大型浮体式構造物は,厚さが数mに対して平面的な広がりが数百mから数kmに及ぶ巨大なものであり,その波浪中における応答は弾性変形が支配的となり,流体と弾性体との動的相互作用,すなわち流力弾性挙動を考慮した流体力及び応答の評価が必要になる。本研究では,大型浮体式構造物が波と流れの複合作用を受ける場合(波浪中を曳航される場合)の流力弾性挙動を予測するための理論的手法を確立するとともに,造波水槽を用いた実験によりその妥当性を検証することを目的とする。 本年度は3年計画の最終年度に当たり,前年度までに開発した解析理論及び数値解析プログラムの妥当性の検証,それを用いてのパラメトリックな数値解析の実施及び研究の纏めに重点を置いて研究を行った。主な研究成果は次の通りである。 1.前年度までに開発した波と流れの複合作用を受ける3次元任意形状大型浮体式構造物の流力弾性応答を低流速近似摂動理論に基づき予測する理論とこれを評価するための数値解析プログラムの妥当性を円盤状浮体構造物の流力弾性応答の解析解との比較により検証した。本手法は,波と流れが存在する場合のポテンシャル流れ理論の支配方程式を流速に比例するパラメーターについて摂動展開し,流速の2次項を省略することによって,波と流れが共存する場合の流力弾性解析を流れがない場合のグリーン関数を核関数とする積分方程式の解に帰着させる極めて効率的な解析法である。また曳航方向と逆向きに流れを作用させれば,波浪中を曳航される浮体にも対応させることができる。 2.上記の理論を適用し,波と流れの複合作用を受ける大型矩形状浮体構造物の流力弾性応答のパラメトリックな数値解析を行い,水槽実験結果との比較によりその妥当性を検証するとともに,流れ(曳航速度)が共存する場合には,両者の相互干渉効果により波だけの単独作用時よりも流体力や応答が著しく増加することを示す結果を得た。
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