研究概要 |
(1)引き続き,広域高密度風観測(NeWMeK)データと観測地点地形情報を用いて,九州全域で台風時と非台風時の風速分布時系列の解析を行い,平均風速が15m/secを超える記録の突風率を,観測点毎に16方位別に整理した。突風率は,気象条件,平均風速,周辺地形の影響により風向ごとに異なる傾向を示すことを明らかにした。 (2)突風率の値は,台風時・非台風時の気象条件や風向,観測点によってばらつきがあるものの,平均値は台風時で1.9程度,非台風時で1.7程度となり,台風時に突風率の値は大きくなる。 (3)台風9918号に関する被害統計資料を用いて、住家被害発生と最大風速及び最大瞬間風速の関係を整理し、強風継続時間と被害率増大の関係を検討した。その結果,最大風速との関連は小さく,最大瞬間風速が30m/s以上になると急激に被害が発生していることが分かった。これは,これまでの住家被害と同じ傾向であり,実際の強風被害低減を最大瞬間風速と関連して対策すべき示唆を与え,本研究の最終報告への指針となった。また風速35m/sを超える風速の場合には風速継続時間と共に被害率が増大,すなわち被害が拡大していく傾向を明らかにした。 (4)強風災害危険度マップの最終とりまとめとして,九州地区の最大瞬間風速マップを作成した。本研究では,風向別突風率情報に建築物荷重指針で示された基本風速値(100年再現期待値)を組み合わせて,最大瞬間風速値を5m/secごとに区切り,色の濃淡で示した風向別の最大瞬間風速マップを試作し,強風災害危険度マップとしての活用に言及した。 (6)北風と南風の場合では,非台風時に比べ,台風時では高風速であっても突風率の値が小さくなり難くいので,見積もられる最大瞬間風速値はより大きくなる。また,台風時には北風に比べて南風の場合に,最大瞬間風速が大きく見積もられることが分かった。
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