研究課題
快適性には、不快がないという消極的(negative)な快適性と、面白い・楽しい・気持ちいいという積極的(positive)な快適性の2種類がある。後者の快適性はプレザントネス(pleasantness)とも呼ばれている。現在の技術の下で、建築環境工学的諸問題の多くが解決され、ほぼ不快のない空間の達成がなされていると言っていい。しかし、このような状態では、暖かいとか涼しいといったプレザントネスはない。本研究の目的は、オフィス環境における温熱環境と照明視環境を中心にプレザントネス理論を応用した新たな環境調整法を検討し、その評価手法を確立することである。本年度は、温熱環境と視環境にそれぞれ別れ、以下の研究を行った。1)温熱環境:本年度は、被験者実験により、低湿度空調のプレザントネス効果および屋外から室内への移動(環境変化)に伴う生理心理反応とプレザントネス性の関係について追加実験を行い、データの蓄積を行った。さらに、気流条件を加えた実験を予備的に行った。他の研究者によって行われている研究との違いは、アンビエントつまり周囲気温を中立温度ではなく不快側に設定する点である。気温の不快を気流と湿度・放射制御によるプレザント効果で補償する実験である。2)視環境:前年度は高輝度窓面をシミュレートする調光可能な光源装置を作成し、オフィス環境実験室でアクセプタブル・グレアの実験を行った。本年度はさらに条件を増やすとともに、視認性、作業性、情動反応についても同時測定を行い、アクセプタブル・グレアとの関係について検討し、個人差はあるもののアクセプタブル・グレアの存在を確認することができた。また、視覚刺激生成器(VSG)を用いて「主観的輪郭」知覚についても、本格的に実験を行った。
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