視環境の善し悪しは視対象物の条件、照明などの環境条件、見る者の視覚特性を総合して判断される。本研究は、視機能の低下している高齢者にとっても快適な視環境を提供できることを目的とする。平成13年度は視力と年齢を実験変数に組み込んだ上で、視対象の大きさや輝度対比に加えて色の三属性の明視性への影響を明らかにする。視対象と背景の色差の明視性や作業者心理への影響を明らかにするための評価実験を行い、結果を定性的に検討する。 <実験概要> ・評価視標の実験変数:色(色の三属性を段階的に変化させた、視力表と文書視標を作成) ・被験者の年齢と視力:定性的検討を行うため、各実験の被験者数は若齢者、高齢者それぞれ3〜5人。 ・背景輝度:約7.0、70、700cd/m^2の三条件 ・測定項目は最大視力、細部識別閾値、読み易さ、明視性、明るさ感、透目性、読もうとする意欲など。 <結果> 輝度対比が比較的保証されている条件の下で色差が一定の場合、明度の影響が彩度や色相の影響に比べて圧倒的に大きい。輝度対比を一定にした場合、明視性を左右する細部識別閾値に対する色相や彩度の顕著な影響は確認されなかった。しかし、誘目性などの作業者心理については色相や彩度の影響が確認された。 細部識別閾値の明るさなどの環境条件による変化には個人差があり、各人の最大視力によって異なるが、変化を最大視力に対する比(視力比)で表すと、視力や年齢による個人差が払拭され、簡便かつ合理的な視認能力の取り扱いが可能なことが、無彩色視対象について確認された。しかし、有彩色視対象について、視力比による取り扱い範囲を明らかにするには、実験条件を追加した上での更なる検討が必要である。
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