平成14年度は本課題の最終年度であるため、平成12年度から2年に渡って行ってきた文字視対象の各構成要素(大きさ、対比、形、配列、色など)の明視性への影響や作業者心理への効果に関する知見を総合的に検討し、視認能力の個人差を考慮できる明視環境の評価法を構築することを、第一の目標として、研究を推進した。その結果、視対象の各構成要素(対比、形、配列、色)および環境条件(背景輝度)という物理条件の影響が全て大きさの影響に置換できることを確認し、任意条件の文字と読み易さの等しい基準条件での文字寸法を等価文字寸法と定義した。また、個人の最大視力が視認能力の視標として有効であることを確認した。その上で、等価文字寸法(物理条件)と個人の最大視力(個人の視認能力)から読み易さを評価する手法を確立した。 更に、屋外標示物や、日常生活品の説明書きの明視性に関与する物理的条件の実測を行い、その設置環境や文字条件の実態を把握した。文字標示物の提示位置に応じて、見かけの文字の大きさや形が大きく変化しており、また、一つの標示物には、複数の大きさの文字や色が使われているという実態を数量的に把握した。文字標示物の明視性を評価するには、物理条件が輻輳している場合の読み易さを評価する手法の考案が必要である。このため、構築した読み易さ評価法を基に、物理条件が輻輳している場合の読み易さを数量化し、観察者の視認能力に応じて各標示物を読み易さに関して順序づけする方法を検討した。
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