研究概要 |
成長期および低成長期において受発注者が置かれた環境の違いを説明するために,「リスク」と「関係レント」の両概念を導入し,次のことを明らかにした。すなわち,成長期においては発注者側により大きな取引リスクがあるが,受注者が長期的関係の樹立による関係レントの最大化を目指すためにそのリスクが解消される。また低成長期においては,一転して受注者側に取引リスクが移動するが,発注者側にも大きな「構造的リスク」が発生する。このような状況変化に対処するには,第一に取引リスクが最小となった発注者側により多くの責任と能動的働きかけが求められること,また構造的リスクを回避するには第三者専門コンサルタント機能の確立と雇用が必要であることが明らかにされた。 第三者専門コンサルタントに関しては、CMr/PMrおよび近年ヨーロヅパを中心に出現した新しい職能であるファサード・エンジニアを検討し、これらが多様な発注方式を可能とすると同時に、コア・コンピテンスを持つサプライヤーと発注者間のサプライチェイン・マネジメントを通じたベスタ・プラクティスの実現を可能にする様態を明らかにした。 一方、受注者に関しては、成長期に受発注者間の長期的関係をつうじて形成されたパートナリング、コンカレント・エンジニアリングといった日本型マネジメントシステムの特長が失われつつある現在、これに変わる技術革新の土壌を獲得することが重要である。そのためには、徹底した顧客指向と技術開発が必要であることを、ファサード・エンジニアリングおよびRC系高層住宅躯体工事のPCa化の分析から結論付けている。
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