新築一辺倒で展開されてきた日本のハウジングにおいても、今後は既存ストックの維持管理・増改築による住環境の改善・整備が大きな割合を占めてくるものと思われるが、その際には住宅の立地する土地および建物の部分の所有・利用に関する複雑な権利関係をいかに円滑に調整していくかが大きな課題となってくる。 本研究では、近い将来のハウジングのあり方を考える上で意義深いと思われる、こうした権利関係調整手法に関する国際比較を試みる。(建築的)空間の所有・利用に関する権利関係には、地域・時代によって、またその明確化を促す行為や出来事の内容によって、当然のように多様性が存在しており、その多様性は、日本で概ねひとつの権利関係に対応し得る概念(住宅における「分譲」「賃貸」といった概念など)自体が、世界的に見れば決して同一の権利関係を示さないという事実を含んでいる。最終年度である本年度は、下記の事柄に関する各国の識者からの情報収集、特徴的な住宅地の現地調査、これらの総括を行った。 (1)住宅(地)における権利関係の種類と、それぞれに典型的な空間・土地区分の所有、利用、更新、変更などに関する権利の状態、それらの根拠となる法制度 (2)これらの権利を有する、あるいは行使する主体の属性(名称、歴史、構成員、財源、意思決定機構、根拠となる法制度など) (3)以上の成果の位置付けを明確にするための、各国における住宅政策の骨子と典型的なハウジングタイプ (4)持続性のある居住環境の運営を意図した特徴的な住宅(地)における、権利の状態の歴史的な変化(払い下げなど)
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