本研究は、「外国人」の異文化環境への移行における生活環境の形成構築、即ち、分かりにくく不慣れな環境が分かりやすく馴染み深いものへと変貌していく過程に焦点を絞り、その様相の記述と物理的・社会文化的環境とのトランザクショシを明らかにする。その具体的端緒として、目的地の同定と経路探索にみられる、言語ならびに空間構造文化の差異に依りもたらされる問題点とそれらの対処過程を明らかにする。 今年度は、下記(1)〜(3)の調査を行った。 (1)都市環境情報の現状と特徴に関する調査として、大阪の梅田ターミナル地区(JR大阪駅を中心に概ね南北1.5Km東西1.0Kmの範囲)を典型的な事例として採り上げ、パブリックサイン・主要ランドマークおよび空間的分節等を始めとする都市環境情報の分布状況と様態(機能・形態・色彩等)の実態踏査調査。 (2)利用者の特性と情報要求ならびに情報処理様式解明のために、既往の研究成果の総括ならびに関係当事者への質間紙・面接調査に基づいて、情報要求特性および情報入手・処理様式、すなわち、いつ、どこで、どのような情報を必要とし、どのような様式で情報を入手しもしくは入手困難であるか、またどのように判断し得ている(いない)か等を集約整理。 (3)「外国人」ならびに対照群としての「日本人」をそれぞれ60名、定点から各目的点まで追跡調査し、可能な場合は面接調査を加え、経路の探索・情報入手状況を記録分析。 以上の結果、大阪駅周辺のような複雑な環境条件では、言語・各種情報・杜会空間構造等に不慣れな外国人来訪者にとって、案内情報そのものの量的・質的不備はもとより、それら情報の存在自体が認知され難い状況にあること、都市施設・建築施設の空間構造理解の面で、杜会文化的背景の差異による困難が指摘された。
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