本研究では、「外国人」にとって分かりにくいとされる日本の都市環境における探索行動の実態を調査し、「分かりにくさ」と「迷い」の要因を明らかにし、それらが滞在期間によって変化する様相を検討したうえで、改善のための環境デザインのあり方に関する示唆を論じた。概ね下記の調査結果を得た。 (1)来日初期から数年にわたる滞在の事例まで、20数例の探索経験について、いつ、どこで、どのような情報を必要とし、どのような様式で情報を入手しもしくは入手困難であるか、またどのように判断し得ている(いない)か等を整理した。 (2)大阪の梅田ターミナル地区を典型的な事例として採り上げ、サイン・ランドマークおよび空間的分節等を始めとする都市環境情報の実態踏査調査を実施し、案内情報の量的質的不備、ならびに、それら情報の存在自体が認知あるいは理解され難い状況にあること等多くのバリアが抽出された。 (3)大阪の梅田ターミナル地区において、「外国人」58ケースならびに対照群としての「日本人」53ケースについて、定点から各目的点までの移動を追跡し、可能な場合は面接調査を加え、探索行動・情報入手状況を記録し、「迷い」の程度・類型・要因を明らかにした。言語・情報バリアとともに、行動と相補的な関連を持つ認知における、社会文化的背景の差異が見いだされた。 (4)これらの結果に基づいて、多文化共生を目指す分かりやすい環境デザインへの示唆を論じた。
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