研究概要 |
療養病床は,平成4年の第2次医療法改正によって長期入院患者を対象として療養介護機能を提供する慢性期の施設として位置づけられたものであり,今後の高齢社会において重要な役割を持つことになる病院類型である.しかし,その複雑多様な患者像や,看護・介護の実態は充分に把握されておらず,改めて施設計画の在り方を見いだすべき時期に来ているといえる.本研究は,克明な実態調査,観察調査に基づき,看護・介護・生活の3つの視点から,療養病床・病棟の規模と空間構成の在り方を総合的に捉え直そうとするものである. 2年度間にわたった本研究の主な成果は次のように要約される. 1)全国の典型的な療養型病床群の7病院を研究分担者が共同・分担して取材し,その運営実態,病棟構成,看護・介護グループの編成等についての状況把握を行った.特に,看護・介護のスタッフ構成とチーム編成について実態を分析した.又,療養型病床群・病棟の計画課題,検討すべき計画指標の主要な点について整理・検討した. 2)典型的な療養型病床群・病棟の2病院・10病棟において患者属性調査を行い,計500名の患者データを収集・整理した.多変量解析などの分析の結果,医療依存度の高い「医療型」,自立度が比較的高くリハビリテーションを積極的に行う「リハ型」,医療依存度は比較的低いが手厚い介護を必要とする「介護型」,などの6つの主要な患者類型を見いだした. 3)医療保険適用病棟,介護保険適用病棟の双方を持つ地域中核病院の療養型病床群病棟において看護・介護の実態を把握する克明な観察調査を行った.この結果,看護スタッフ,介護スタッフの業務内容,動線の内容の違いを抽出し,看護・介護の側面からみた病棟のグルーピングの在り方,看護・介護拠点の配置手法についての知見を導いた. 以上から,療養病床の病床規模,看護・介護のスタッフ構成とチーム編成,患者の属性類型,患者の生活単位の構成と看護・介護のチーム編成の対応関係,等について知見を整理し,計画指針をまとめた.
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