研究課題
(1)木造社寺モデルに対する振動観測伝統的な社寺建築の構造では水平構面の特性が各垂直構面に大きく影響していることがわかる。また、静的載荷実験と振動観測の結果より算出したモデルの挙動は柱の傾斜が1/500程度まではほぼ一致する結果である.その後柱傾斜が進行するほど剛性は落ちてくる.重心の位置から算出した架構の剛性低下は、・R型試験体(各構面とも頭貫、飛貫、胴貫を有する剛性の高い架構)→変形1/200程度の時の剛性は初期剛性の6割程度。・S型試験体(各構面とも頭貫のみの柔らかい架構)→変形1/200程度の時の剛性は初期剛性の3割程度・T型試験体(1構面は頭貫のみ、他構面は頭貫、飛貫、胴貫を有する剛性の偏心した架構)→変形角1/200程度の時の剛性は初期剛性の4割程度(2)重要文化財行永家住宅における現地観測振動観測の結果、行永家住宅では、土間周りと居室空間でねじれ振動に関しては特性の違う振動を起こしており、床を有する居室空間で部分的に生じたねじれ振動が土間周りに対する影響は変形能力の高い水平構面で変形を吸収するため小さくなる傾向にある.振動観測より算出した各構面の初期剛性は静的載荷実験の結果とほぼ一致するが、部分的に高めに出る傾向が全体的に見られた。(3)重要文化財本願寺大師堂における現地観測本願寺のような巨大建築では、スパンが大きく水平構面の剛性が小さいために多次の振動モードが低い周波数で観測された。また、建物内や地盤中を波動が伝達されるには時間がかかるため、各構面で地震波が入力されるには時間差が生じる。剛床仮定では水平構面の変形によるエネルギー吸収は起きないが、実際には水平構面の変形によるエネルギー吸収が起きており、建物のエネルギー吸収機構に大きく関与している.