研究課題
基盤研究(B)
伝統的木造建築の免震特性と地震被害の解明のため実大の試験体を実際の地震と同様の速度で加振するための新しい加振システムを開発するとともに実際の木造民家を用いた各種の実験を系統的に実施した。得られた結果は以下に要約する通りである。1)任意の地震動を受けた時の木造架構の振動を現地で再現するための小型の起振装置を試作した。能力は最高速度580.8m/s、最大加速度6146mm/s^2である。応答加速度を直接制御することはできないが、従来のオンラン実験と異なり応答速度まで制御可能となった。2)伝統的木造建築の土壁と仕口の力学的な性能評価を模型を使って実験を行った。土壁においては損傷は散りまわりに集中し、しかも変形角1/60程度まで目視で確認できる損傷は生じず、オンライン実験では瞬間損傷エネルギーと応答速度との間には良好な相関関係があることが分かった。胴差し型式の木造仕口の性能評価においては、剛接合とは言えないし、接合部の回転、構面の変形、直行材の影響等を考慮する必要がある。3)伝統木造模型架構の振動観測と静的耐力の相関性の把握、実構造物の振動観測と地盤の波動伝達特性の把握については、模型架構の静的な荷重変形関係と振動観測により得られた荷重変形関係とは大まかに一致している。この事により、実建物の振動観測により当該建物の剛性が把握できることが分かった。更に国重要文化財西本願寺御影堂の修理事業に際して実地適用した結果、時間差をもって入力される地震波の波動現象の特性があきらかになった。4)衝撃的な振動観測手法による構造特性の評価においては、振動観測手法により構面ごとの剛性、水平せん断剛性を求めた結果、静的に求めたものの初期剛性の約2倍であった。また、部材ごとに衝撃的な振動特性をもっていることが分かり、建物が衝撃による部分的な破壊をする可能性を示唆した。