研究概要 |
Ag/AlO_x/Alのような金属/絶縁体/金属(MIM)からなるトンネル接合に対して金属の仕事関数以下の範囲で電圧(数V程度)を印加するとホットエレクトロン(hot-electron)と呼ばれるフェルミ準位(E_f)よりも高いエネルギー状態にある電子を生成させうる。本研究では、MIMトンネル接合を作成し電圧を印加してhot-electronを生成させた場合の接合表面・界面におけるhot-electronの挙動を基礎的に調べること、さらにhot-electronと電極金属表面化学種との相互作用について検討することを目的とした。 本年度は、昨年度検討したAg/AlO_x/Al接合に加え、超高真空中においてCu/AlO_x/Al接合の形成を試み、その最適作成条件を検討した。この際、Cu/AlO_x/Al接合のI-V特性を超高真空チャンバー内でその場で測定するためのコンタクトプローブを試作した。試作したプローブを用いて、作成したトンネル接合のI-V測定を試み、(1)金属蒸着時の真空度は10^<-9>Torr台で、(2)金属の蒸着膜厚はそれぞれ20nm程度、さらに(3)Al,薄膜蒸着後大気中にてハロゲンヒーターにより400℃以上に加熱してその表面を酸化することによりトンネル接合が得られることがわかった。90Kに冷却したトンネル接合Cu表面に一酸化炭素(CO)を10^<-9>Torr台の圧力で暴露して赤外反射スペクトルを測定したところ、2080-2070cm^<-1>付近にC-O伸縮振動による吸収帯があらわれCOがトンネル接合Cu表面に化学吸着することが確認された。COを飽和吸着させたCu/AlO_x/Al接合に対して電圧を印加すると、吸着COによるピーク強度がわずかながら変化した。今後さらなる検討が必要ではあるが、この結果はホットエレクトロンと吸着化学種間の相互作用により説明されると考えている。
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