研究概要 |
準結晶は、これまでの結晶学の常識を覆す新しい規則性を有する金属物質として、数多くの固体物理学者の注目を集めてきた。これまでの構造研究によって、たとえば正10角形準結晶は、5回対称原子カラムを基本構造とすることが解明されているが、主としてカラム内の原子配列に関する基礎的情報が欠如していることに起因し、特異な電気的特性の発現メカニズムに関する議論は不充分である。本研究グループは,この現状を打破するため、たとえ近接する原子番号を有する遷移元素が共存する場合でも,的確に構造的な情報を分別できるX線異常散乱法を駆使して,原子カラム内の遷移元素の分布決定を行うことを目的とする。 本年度は,補助金にて購入したイメージングプレート搭載異常散乱装置を駆使して,正10角形準結晶の構造を解明するために重要な各種近似結晶の構造解析を積極的に展開した.具体的には,(1)Al-Fe-Cu系5回対称カラム内の遷移元素の分布を正確に決定した成果,(2)Al-Ni-Co系W相の構造解析に成功し,準結晶基本構造ユニットを決定した研究,(3)巨大な正20面体原子クラスターを有する新しい2/1-AlMgZn近似結晶の解明など,数多くの成果をあげることができた.これら一連の成果は,これまで推定されてきた遷移元素の挙動に関する仮説を覆す新しい発見,Al-Co-Ni系準結晶の構造解明に最終結論を与える研究,またこれまで代表者らによって示唆されてきた巨大原子クラスター構造単位の普遍性を示唆する研究として,国内外の高い評価を得ている.
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