研究概要 |
準結晶は、これまでの結晶学の常識を覆す新しい規則性を有する金属物質として、数多くの固体物理学者の注目を集めてきた。これまでの系統的な構造研究によって、たとえば正10角形準結晶は、5回対称原子カラムを基本構造とすることが解明されているが、主としてカラム内の遷移金属の分布に関する基礎的情報が欠如していることに起因し、特異な電気的特性の発現メカニズムに関する議論は不充分である。本研究グループはこの現状を打破するため、たとえ近接する原子番号を有する遷移元素が共存する場合でも、的確に構造的な情報を分別できるX線異常散乱法を駆使して、原子カラム内の遷移元素の分布決定を行うことを目的とした。 平成12年度は、補助金にてイメージングプレート搭載異常散乱装置を開発導入し、本装置の基本性能および解析ソフトウェアの整備を中心に研究を遂行した。特に、本解析装置は異常分散効果を効率的に利用する目的のため、市販の装置に比べて低エネルギー側の分光特性に改良を重ねた。平成12年度に達成できた研究成果の中では、本装置および放射光源を併用しAl-Fe-Cu系5回対称カラム内の遷移元素の分布の解析結果は特筆に価する。X線異常散乱の実験によって解明できた、CuがAl席の一部を置換する実験事実は、これまで推定されてきた,遷移元素およびCuは類似の挙動をするとの仮説を覆す新しい発見である。また、本プロジェクトによって開発できたX線異常散乱法を用いて特定元素の分布の2次元イメージングは、"恐らく"世界ではじめての成功例であり、今後その益々の発展が期待できる。平成13年度は、本研究で開発した解析システムを駆使して研究主眼のAl-Ni-Co系合金構造の系統的解析を行った。その研究成果の中で、Al-Ni-Co系W相の構造解析に成功し準結晶基本構造ユニットを決定した研究は、準結晶の国際会議に招待講演を依頼されるなど国際的に大変高い評価を得ることができた。また、本研究の知的基盤となっている巨大な正20面体原子クラスターを有する金属結晶群の研究に関しても、2/1-AlMgZn近似結晶の解明など数多くの成果をあげ、アジア地区準結晶ワークショップに研究成果報告依頼講演を受けた。
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