研究概要 |
マイクロ波照射による材料プロセッシングにおいては,物質のマイクロ波吸収に伴う自己発熱を利用した内部加熱や選択加熱等の熱的効果に加え,交番電磁界中での反応に起因する非熱的効果が重要である。非熱的効果に基づく現象として,高強度のマイクロ波照射下でフェライトがアモルファス化する現象があり,これは高強度のマイクロ波電磁界中での構造揺らぎに起因する。本研究では28GHzのマイクロ波を用い,種々のフェライト系のマイクロ波吸収特性を評価し,低酸素分圧下ではマイクロ波吸収が強くなり,かつ結晶性の低下が顕著になることを見いだした。結晶性の低下はマイクロ波の照射出力を増大させても引き起こされることから,物質自身のマイクロ波吸収エネルギーの増大に伴う構造の揺らぎがアモルファス化の要因であることが明らかとなった。本来,正スピネル構造で反強磁性を示すZnFe_2O_4は,高出力のマイクロ波照射あるいは低酸素分圧下でのマイクロ波照射によって強い磁化を示すようになった。X線光電子分光測定によって,照射前はFe^<3+>イオンは全て八面体サイトを占有していたのに対し,照射後は約半数が四面体サイトに移動し,逆スピネル構造に近いイオン分布となっていることが判明した。これは,マイクロ波交番電磁界中でのイオンの揺動により,(111)面がすべり面となり,この転位の導入(積層欠陥の発生)によって結晶構造に乱れを生じるとともに,Fe^<3+>イオンが八面体サイトから四面体サイトへ移動したものと推測される。アモルファス相がせん断応力によって結晶化することからもこの推論は支持される。 以上,本研究により,マイクロ波照射下でのフェライトのアモルファス化のメカニズムに関する知見が得られ,かつマイクロ波吸収エネルギーを変化させることによって,積層欠陥を導入し,フェライト相の磁化,抗磁力等の諸物性を制御できることを明らかにした。
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