誘電体および磁性体の双極子相互作用に着目して量子効果による巨大な物性発現制御を試みた。強誘電体と磁性体に対する広範な実験から、以下に示す結果を得た。 1.量子常誘電体SrTiO_3の酸素同位体置換により量子強誘電体化することが可能である。バイアスおよび電場依存性は臨界組成33%近傍で最大となることを確認した。 2.ラマンスペクトルおよびブリルアン散乱により誘電率が最大となる温度近傍で相転移が存在し、ソフトモードが存在することを確認した。 3.複屈折率の測定から相転移点近傍で複屈折率は著しく増加し、相転移の次数は一次であることを確認した。 4.バイアスとUV光照射により誘電率は数百万のオーダとなる巨大量子効果が発現し、これが量子常誘電体でのみ現れることを確認した。 5.コバルトイオンの低スピン-高スピン転移による物性制御を試みた。低スピンから高スピンへと変化する場合の転移の次数は一次であり、90Kで明確な一次相転移と、金属-非金属転移および常磁性-非磁性転移を示すことを明らかにした。 これらの結果はいずれも物性発現の機構を個々の双極子レベルまで踏み込んで議論した結果導き出されたものであり、誘電体と磁性体の研究分野で革命的発見と評価されている。
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