研究課題/領域番号 |
12450267
|
研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
和田 智志 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (60240545)
|
研究分担者 |
井川 博行 神奈川工科大学, 工学部, 教授 (30016612)
垣花 眞人 東京工業大学, 大学院・総合理工学研究科, 助教授 (50233664)
鶴見 敬章 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 教授 (70188647)
|
キーワード | 強誘電体 / 単結晶微粒子 / 蓚酸バリウムチタニル / 2段階熱分解法 / チタン酸バリウム / 赤外反射法 / 誘電分極応答 / 格子振動 |
研究概要 |
欠陥のない強誘電体微結晶を合成する手段として、低温直接合成(LTDS)法を用いて研究を進めることを検討してきたが、LTDS法で合成した様々な粒径(4〜70nm)のチタン酸バリウム単結晶粒子において、その結晶構造や格子振動に関するTHz領域での誘電分散に大きな違いが見られないことが明らかとなった。この原因として、液相法では完全に水が反応に関与しないような合成方法を確立できないために、どうしても合成途中において水酸基が結晶中に取り込まれること、また水酸基の取り込みに伴い、電荷を補償するためBa空孔も同時に生成すること、そしてこれらの欠陥対の存在により格子振動が影響を受け、サイズ効果以前に欠陥効果を測定していたことが明らかとなった。そこで、強誘電体単結晶微粒子のLTDS法による合成をあきらめ、液相を経由しない新しいチタン酸バリウム単結晶粒子の合成方法を検討した。そのために、原料としてBa/Ti比が必ず1.00に制御されている蓚酸バリウムチタニルを用いることとした。蓚酸バリウムチタニルを用いたチタン酸バリウム粒子の合成法はすでに工業的に確立されているものの、その粒径は数百nmと非常に大きい。最近150nmまで粒径を減少させることができたとの報告があるものの、そこが限界だと考えられている。そこで、生成するチタン酸バリウムのBa/Ti比が必ず1.00になること、また生成物中の不純物や欠陥濃度が低いことに注目し、雰囲気や温度を細かく制御することでnmオーダーのチタン酸バリウム単結晶粒子の合成を試みた。その結果、通常の空気中、または酸素中では報告どおり、チタン酸バリウム単相にするには700℃以上の高温が必要になること、またその場合には粒径が150nmにまで大きくなることを確認した。また700℃以下の温度ではチタン酸バリウムに加えて、炭酸バリウム、酸化チタンが共存し、サイズ効果の研究には不適当であった。一方、真空中で排気しながら蓚酸バリウムチタニルを熱分解することで微小なチタン酸バリウム微粒子の合成を試みたところ、炭素が残り、黒い粉末が生成したこと、また得られたチタン酸バリウムが目的とする立方晶ではなく六方晶構造のチタン酸バリウムであることが判明した。この六方晶の生成機構を検討した結果、蓚酸塩の分解時に酸素が余分に取られ、その結果Tiの一部が4価から3価に還元され、この3価のTiを核にして六方晶が生成することが明らかとなった。そこで、蓚酸塩の炭素種の除去を低温でしかも酸素気流中で行うことでTiの価数を4価に保ったまま、非晶質の中間生成物を合成する。続いて、この中間生成物を真空中で排気しながら600℃前後の温度で熱処理することで立方晶のチタン酸バリウムを合成する。このような2段階熱分解法を新たに開発した。この方法を用いて蓚酸バリウムチタニルの熱分解を行ったところ、初めて欠陥や不純物の取り込みがほとんどない17nmの平均粒径を持つチタン酸バリウム単結晶粒子の合成に成功した。この粒子を用いて赤外反射法により初めてチタン酸バリウム粒子のTHz領域における誘電分極応答の測定に成功した。現在、ラマン分光測定の結果と合わせながら格子振動解析を行っている。
|