研究概要 |
2種のペロブスカイト型銅酸化物RBa_2Cu_3O_y(RBCO)とPrBa_2Cu_3O_y(PBCO)を固溶させて得る複合銅酸化物R_<1-x>Pr_xBa_2Cu_3O_y(RPBCO)はナノ構造を持つ複合体とみなせるが、この材料において、Pr濃度xの高い領域で抵抗が電流に比例しない非オーム性伝導が生じることをこれまで報告してきた。当初、この現象は希土類元素RがGdである場合のGPBCOについて見出されたが、その後の研究でRがNdである場合のNPBCOに対し'てはより顕著に現れることが分かった。いずれにも試料が超伝導性を示さなくなるPr濃度x_<pc>(パーコレーション閾値)が存在し、この非オーム性伝導がこのパーコレーション閾値近傍およびそれ以上の高濃度で発現していることから、RPBCOにおけるナノ構造の不均質性の挙動が深く関わっていることが明らかになってきた。GPBCOとNPBCO以外の複合銅酸化物RPBCO (R=Ho, Y) においても同様な非オーム性抵抗が現れることが確認され,た。いずれの複合銅酸化物においても、非オーム伝導は3つの異なる振る舞いを示すことが見出された。xが増大するにつれ、最初は電流の増加関数としての抵抗が現れ、次いで無依存な抵抗に変化し、最後に減少関数としての負性抵抗が順次出現する。この特異な伝導現象は、RPBCO型の複合銅酸化物に共通して発現しうるもので、超伝導相が形成するナノ構造ネットワークの挙動と深く結びついている。すなわち、3つのタイプの抵抗は、それぞれ、ネットワークの電流増大による分断過程、超伝導相(または高伝導相)クラスターの密な分散と疎な分散の形成過程に対応する電流分布の挙動を反映していると理解される。特に負性抵抗はパーコレーション転移後の超伝導相クラスター間に生じる局所的ジュール熱の発生に起因すると考えられる。
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