研究課題/領域番号 |
12450276
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
杉本 諭 東北大学, 大学院・工学研究科, 助教授 (10171175)
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研究分担者 |
籠谷 登志夫 東北大学, 大学院・工学研究科, 助手 (40005343)
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キーワード | 電磁波吸収体 / 不均化反応 / 反射損失 / インピーダンス / 希土類化合物 / 窒化 / 水素化 |
研究概要 |
衛星通信、移動通信の発達により電磁波障害が社会的問題となり、GHz帯域に対応できる優れた電磁波吸収体が要求されている。しかしスピネル型フェライト系に代表される既存の電磁波吸収体は、飽和磁化Isが低いためSnoekの限界と呼ばれる周波数限界(共鳴周波数fr)が数GHzに存在し、GHz帯域では急激に吸収能が低下する。このためGHz域に対応した新しい電磁波吸収磁性体の開発が急務となっている。Snoekの理論によればIsが高ければfrも高くなるので、鉄合金など高い飽和磁化の金属磁性材料を用いれば優れた高周波特性が得られる。しかし金属では良伝導性のため表皮深さ以下の微粒子にし、各粒子を絶縁しなければならない。希土類-Fe系合金では水素または窒素ガス中熱処理により不均化反応が生じ、鉄と希土類水素化物または窒化物からなるナノメータサイズの微細組織が形成できる。この方法を用いることにより、表皮深さサイズ以下の鉄微粒子を希土類水素化物や窒化物という高電気抵抗の相中に析出させることができ、熱処理だけで鉄微粒子の高飽和磁化を利用したGHz帯域対応の電磁波吸収体粉末の作製が可能となる。そこで本研究は、不均化反応を利用したGHz帯域対応の電磁波吸収体の開発を目的にして、不均化反応条件と磁気共鳴における複素透磁率と電磁波吸収特性との関係を明らかにする。本年度は希土類化合物をR_2Fe_<17>化合物として水素、窒素ガスを用いて不均化反応温度域を明確化し、この温度域を用いて不均化反応を生じさせ、電磁波吸収特性と処理条件の関係を明らかにすることを目的とした。得られた結果を要約すると以下の様になる。(1)923Kで窒素中不均化処理し523Kで大気中酸化処理した粉末において、粒径数100nmのα-FeがSm窒化物(酸化物)中に分散した構造をもつ2相組織が得られた。(2)この粉末の樹脂複合体は3.10GHzでμ_r"=1.62とFe量を等価にしたカルボニル鉄の樹脂複合体の値より50%程度大きい透磁率を示した。(3)この試料では吸収体厚さを変化させることにより、R.L.<-20dBとなる整合状態が1.20〜2.30GHzにおいて得られた。
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