研究概要 |
2次電池の電極材料あるいは将来のエネルギー貯蔵材料として期待され近年盛んに研究開発がなされているプロチウム吸蔵のプロチウム吸放出圧は、一般的に当該合金の水素侵入サイトのエネルギーにより決定されると考えられている.本研究では、LaNi_5,FeTi, TiMn_2を供試材として取り上げ、合金化学的に決まる水素侵入サイトのエネルギー以外に、プロチウム吸放出圧を支配する因子が存在し、プロチウム吸放出圧の決定に寄与しているかを明らかにするとともに,水素化物形成過程をその場観察し,その機構を解明することを目的としている.2元系およびCo添加LaNi_5では,プロチウム放出圧は殆どサイクル数に依存しないものの,吸蔵圧は第1サイクルで特に高く,それ以降はサイクル数に依存しない.微粉化は第1サイクルで顕著に起こり,1サイクル終了後では、50〜100μm程度の大きな粒子も存在するが、微細なクラックが多数形成されており、実効的な粒径は5サイクル終了後と同じ20μm程度である.第1サイクルの吸蔵過程で10^<12>cm^<-2>オーダーの極めて高い密度の転位が導入される.この高密度の転位の導入は、プロチウム化合物内でのみ起こり、ミスフィット転位である.第1サイクルの吸蔵圧が特に高いのは、クラックの導入および転位の導入に要する過水素圧が必要なためである.TiMn_2のプロチウム吸放出圧のサイクル依存性、微細組織の変化はAl添加LaNi_5と類似している.FeTiでは2種のプロチウム化合物が形成されるため2段のプラトーが観察されるが、1段目の吸蔵プラトーはサイクル数増加とともに順次減少する.FeTiは、延性的なため微粉化はほとんど起こらず、転位の導入が各サイクル毎に起こる.従って、1段目の吸蔵プラトー圧の低下は、転位の導入に要する過水素圧がサイクル数増加とともに減少するためである.
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