研究概要 |
L1_2型金属間化合物Ni_3Fe単結晶を用い疲労変形挙動を明らかにした。不規則状態では,繰り返し変形と共に疲労硬化するが,規則状態では疲労初期に硬化するが,その後疲労軟化を示す。この疲労軟化と共に固執すべり帯(PSB)が発達する。このPSB内では2次すべり系の活動より疲労特有の変形微細組織が形成される。磁気異方性は結晶内の転位構造,逆位相境界(APB)に敏感に反応し,この磁気測定により変形微細組織の観察である。疲労初期においては磁気異方性よりAPBの存在が示唆され転位はAPBを含む超格子転位として運動している。しかし疲労軟化が現われる段階においては磁気異方性はAPBより転位による寄与が強く現われた。また透過電子顕微鏡観察の結果によれば,疲労軟化段階においてはPSBが発達し,転位密度も急速に増加する。これらの結果から,疲労軟化段階では変形がPSBの局所領域に集中し,APB形成により規則構造が乱され,この不規則化による新たな転位の運動抵抗が疲労軟化の一因であることが明らかとなった。また,このような疲労軟化挙動は結晶の規則度に強く支配され,規則度の低下に伴って疲労軟化挙動は消失し,単調な疲労硬化挙動を示すことが明らかとなった。
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