研究概要 |
ブリッジマン法によって<123>および<001>の引張軸を有する銅単結晶の試験片を準備した.また,ロードセルおよびひずみゲージから得られる信号を解析し,最適な信号を疲労試験機にフィードバックさせ,定塑性ひずみ制御を可能にする実験システムを構築した. 銅単結晶試験片を用いて塑性せん断ひずみ値γ_<pl>=2×10^<-3>に制御した定塑性ひずみ疲労試験を行い,500,1500,5000,および10000サイクルの各段階で転位組織を走査型電子顕微鏡内でElectron Channelling Contrast Imaging(ECCI)観察した. 実験の初期では応力振幅は急速に増加し,その後約2000サイクル付近で飽和した.また,バウシンガエネルギパラメータβ_Eは900サイクル付近で極大値を持ち,その後徐々に減少した.単一すべり方位を持つ銅単結晶では,この極大値付近からPersistent Slip Band(PSB)と呼ばれるすべり帯が形成され始める. 単一すべり方位を有する試験片の500サイクル後でのECCI像では,コントラストは観察されなかった.しかし,それ以降の1500,5000,10000サイクル後の試験片ではECCI像においてコントラストの変化が観察された.このように,1500サイクル以降にコントラストが観察されたことは,バウシンガエネルギパラメータの変化とも一致する.単一すべり方位を有する試験片の10000サイクル後のECCI像には,はしご状のコントラストを持つバンド状の像が観察された.これは,TEMで従来観察されているPSBと非常に類似したものであり,ECCI像のコントラストもPSBに起因するものだと思われる.また,多重すべり方位を有する試験片の10000サイクル後のECCI像においてもTEMで従来観察されているラビリンス構造と呼ばれる転位構造と非常に類似した像が観察された.
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