研究概要 |
最近は携帯電話や,近距離通信網(LAN)等の発達により,1-10GHzの高周波域有害電波によってもたらされる医療機器や航空機制御機器の誤作動事故が社会問題化し,そのような高周波帯域の有害電波を遮蔽するだけでなく完全に吸収(absorb)してしまう材料の開発が急務となっている. 一方,ウッドセラミックスは,廃木材を解繊後プレス加工によって製造した中密度繊維板(MDF板)に液状フェノール樹脂を含浸して乾燥後,600-800℃付近の温度で低真空中で焼成することによって得られる環境に優しいエコマテリアルである.本研究は,このウッドセラミックスを用いてGHz帯の電波吸収材料を開発することを目的として実施した. 平成12年度の研究によって,650-750℃で焼成されたMDFウッドセラミックス板は7-0.8GHzの周波数帯で約50dBの優れた電磁波吸収特性を示すことを明らかにした. 平成13年度は,製材所から大量に生ずる木粉を有効利用する目的で,木粉とフェノール樹脂粉を混合後,焼成することによって得られる粉末法ウッドセラミックスについて,平成12年度のMDF法ウッドセラミックスと電波吸収特性等を比較するとともに,SiC粉末の複合化による吸収特性の改善を試みた.その結果,(1)木粉70mass%,フェノール樹脂粉30mass%を混合した後,室温で100MPaでプレス後,650℃で焼成した場合,約2GHzで50dBの大きな吸収を示した,(2)さらに,SiC粉を混合した場合,混合SiC量の増加とともに吸収ピークは高GHz帯へシフトした.つまり,SiC量が47%の場合,約9GHzで約40dBの大きい吸収が得られた. 平成14年度は,うばめ樫,孟宗竹を焼成(炭化)して得られる天然のウッドセラミックスである「備長炭」および「竹炭」の電磁波吸収特性を,焼成温度を変化させて測定した.備長炭,竹炭ともに,600℃および650℃で焼成した場合にのみ顕著な吸収(約50dB)が観察された.吸収する電磁波の周波数は600℃焼成の場合は1-3GHz,650℃焼成の場合は8-13GHzと高周波域にシフトした.以上,1-10GHz帯で優れた吸収特性を有する電波吸収体を,ウッドセラミックスを用いて作製可能なことを明らかにした.
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