化学反応を利用した電熱爆発粉体溶射法により、化学組成が調整されたモノリシックなファインセラミックスのトップコート層と、セラミックスと基材の金属が混ざり合って混合量が傾斜した接着・結合層から成る溶射皮膜の合成と皮膜の形成機構の解明を目指すものである。本年度の研究実績は以下の通りである。 (1)現有の電熱爆発粉体溶射装置と現有設備である三基のフラッシュ(閃光)X線発生装置、および新たに購入した一基のフラッシュエックス線発生器(追加チャンネル)を組み合わせて実験システムを作成した。即ち、計四基のX線により、基板の上流と裏側に抜ける溶融粒子群ジェットの各部の密度と速度について、異なる時刻にジェットの両側面からX線を瞬間照射して対向するフィルムに陰影を記録出来るようにした。この際に、X線から発生する硬X線と軟X線を同時に用いて撮影できるように双方に適したフィルムを保持するケースを設計、製作した。 (2)ジルコニウムがチタンよりもX線吸収量が大きいために陰影濃度差が大きいX線写真が期待できるために、予定していた窒化チタン-ホウ化チタン系に代わって酸化ジルコニウムーホウ化ジルコニウム系を用いた。炭化タングステン溶射ジェットとこのジルコニウム系溶射ジェット陰影濃度から質量流量を算出する準備のために、炭化タングステン粉体とこのジルコニウム系粉体を用いて質量と陰影濃度の相関関係の調査を行った。 (3)溶射ジェットをX線撮影して成膜速度を評価する本手法を関連学会と学術雑誌に発表した。
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