Fe-9mass%Cr-Si合金のAr-H_2O気流中、973Kでの初期酸化の組織形成について調べ、皮膜の組織形成に及ぼすSiの効果を検討した。 酸化組織は表面から、外層(Fe_3O_4+FeO)/中間層((FeCr)_3O_4+FeO)/内層((FeCr)_3O_4+FeO)/内部酸化層(Fe中に酸化物が析出した層)/合金の順で構成されている.耐酸化性の目安である酸化速度の低減には内部酸化層/合金界面におけるSiやCrの酸化物の析出状態が大きな影響を及ぼすと考えられたので、透過型電子顕微鏡を用いて、詳細な解析を行った.内部酸化層の厚さは初期には増大するが、その後減少し、消失する。初期の内部酸化層/合金界面には非晶質SiO_2の薄い膜が不連続に生成しており、徐々に連続層になる。この間は内部酸化層における析出酸化物は主としてFeCr_2O_4であり、微細な非晶質SiO_2の析出物も検出される。その後、非晶質SiO_2の膜が連続的になると、非晶質SiO_2中の酸素の拡散係数が小さいことから、酸素の移動に対するバリアーとなり、内部酸化層中の酸素ポテンシャルが上昇し、FeOとFeCr_2O_4とが析出している。この段階では内部酸化層は内層となり、内部酸化層は消失する。さらに長時間なると、非晶質SiO_2の連続膜とFeOとが反応して、Fe_2SiO_4となり、連続膜が破壊されさらなる酸化が進行することが示された。このことから、合金へのSi添加は酸化速度を低減するが、本質的な耐酸化性の付与には不十分であることが明らかとなった.
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