塑性加工と熱処理を組み合せた工程で発生する多結晶金属の結晶集合組織を制御し、新規材料特性の創生、あるいは材質改善・向上を行うためには、加工・熱処理中に形成される結晶集合組織を定量的に予測・評価する技術が必要となる。そこで、本研究では、多結晶塑性モデルならびに結晶回転解析理論の定式化を行い、それらの成果と三次元結晶方位分布関数(ODF)解析プログラムに基づき、小規模なコンピューター・システムの使用によって、任意の塑性加工と変態とを受けた結晶性材料製品中に発達する集合組織とそれに基づく材質特性を対話形式でかつ定量的に予測・評価できる計算機プログラムの試作と、それに伴うソフト技術の開発を行うことを目的とした。 平成14年度においては、関数解析学のベクトル空間法を採用した新しい概念の結晶塑性論の定式化に成功した。そして、それをもとに活動すべり系と拘束変形に基因する結晶方位回転を効率的に予測できる具体的計算手法を考案することができた。さらに、提案した計算手法を昨年度提案した、いわゆる"strain gradient plasticity"理論をベースとする結晶塑性モデルに組込んだ。その結果、結晶の局所格子回転解析法を構築し、集合組織の発達を定量的に予測するアルゴリズムと計算プログラムを開発することができた。また、Ag及びAg-Al合金の各種条件下での圧延集合組織発達過程をX選回析装置を用いた極点図計測と3次元方位分布関数(ODF)によって詳しく調べ、実験結果が、本研究で開発した予測システムで十分説明できることを明らかに、その有効性を確認することができた。
|