本研究では比較的簡単な方法によるバンプ形成法として溶融はんだ浴中へのディップ法を取り上げ、この手法により形成するバンプの形状を明らかにすることを目的とし、形状に及ぼす種々の因子の影響を検討した。 前年度の研究成果から、溶融ディップ方式における微細バンプ形成の問題点がいくつか明らかになった。一つは鉛フリーはんだにおけるぬれ性の改善と界面の金属間化合物形成抑制であり、他はバンプアスペクト比の向上である。鉛フリーはんだのぬれ性改善にとって重要な因子はいくつかあり、鉛フリーはんだにおける金属元素の電極電位の影響を検討した。その結果、銅とはんだ付する場合、鉛フリーはんだの電極電位はCuよりもやや低く、フラックス中に優先溶解する特定成分(例えば鉛のような電位の極端に低い元素)を含まないことが重要であることを見出した。Sn-3.5Ag系鉛フリーはんだのぬれ改善には電極電位をやや低下する元素、例えば、Pbを添加するとSn-3.5Agのぬれが改善できた。 界面における金属間化合物抑制を、銅の熱処理状態および銅への各種添加元素によって抑制できるかどうか検討した。しかし、銅の熱処理状態は金属間化合物形成厚さや速度に影響を与えることはないこと、ならびに、大きな抑制効果をもつ元素は見いだせなかった。このため、ディップ方式においては欠陥を発生しない温度条件下で、低温かつ短時間のプロセスによりバンプを形成しなければならない。 さらに、前年度の試験からアスペクト比の向上には、はんだの内圧を高めることが重要であることがわかったので、微小ドリル穴を利用したバンプ転写方式といえる手法によりその有効性を確認し、アスペクト比を高められる新方式を提案した。
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