2元系TiAlを試料とし、エンジン燃焼雰囲気に含まれる水蒸気と窒素の影響を調べるため、(1)酸素、(2)酸素と水蒸気の混合ガス、(3)アルゴンと水蒸気の混合ガス、(4)酸素と窒素の混合ガス中の酸化挙動を実験的に調査した。さらに(5)窒素中の窒化および不純物による酸化挙動も実験的に調査した。試験温度は1100Kおよび1200Kで最長100ksまで酸化させた。熱重量法を用いて速度論的挙動を把握し、酸化生成物の同定、観察、解析にはX線回折、走査電子顕微鏡、電子線微小部分析法を用いた。炭酸ガス中の酸化挙動については、既に報告している。 水蒸気の添加で酸化は非常に速くなり、水蒸気濃度を上げていくとさらに速くなるが、100%水蒸気(3)では少し下がる。スケールは2層構造を示し、外層は主にTiO_2から成り、内層は多孔質で非常に細かいTiO_2とAl_2O_3の混合物から成る。酸素や空気中の酸化では酸化物粒子同士が酸化の進行とともに焼結するのに対して、水蒸気を含む雰囲気ではそれはおこらない。水蒸気の存在により、TiO_2中にプロトンが入り、その中の酸素の拡散が促進され、このため酸化が促進されたと考えられる。さらに、水蒸気が酸化物粒子に吸着するとそれらの焼結を阻害する。そのため、微細な組織になったと考えられる。水蒸気含有雰囲気では、酸化はほぼ直線則に従うことが明かとなった。 次に、TiAlの酸化挙動に及ぼす窒素の影響を1100Kおよび1200Kで最長100ksまで実験的に検討した。酸素に20%窒素を添加すると、酸化は速くなる。この影響は窒素濃度を上げてもほぼ同じである。100%窒素では、不純物としての酸素で酸化と窒化が起こるが、酸化増量は少し低い。酸素中では酸化の初期にTiO_2層の下に形成される薄いAl_2O_3の連続層が窒素の存在により、不連続になる。これは、Al_2O_3と同時にTiNが形成され、それがAl_2O_3層に混じるためである。TiNはその後の酸化でTiO_2に変わりスケールは保護性を失う。 さらに、TiAlの酸化後の機械的性質の測定のため、オートグラフを設置し、所定雰囲気中での試験ができるように装置を作成し、予備実験を行った。
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