研究概要 |
前年度は,バネ状試験片(コイルバネ)および片持ち梁を用いて,時効による形状記憶の発現時期および変形量の検討を行った.また,片持ち梁においては板の引張面と圧縮面で時効による析出状況が全く異なることを示し,この析出状況の違いを通して形状記憶現象が発現することを明らかにした.本年度は,片持ち梁として梁の長手方向のひずみが一定となる平等強さ梁を用いて,形状変化のひずみを定量化した.時効によってもたらされる変形は時効前に導入する弾性ひずみが原因であることを解明した.さらに,片持ち梁の引張面と圧縮面を想定して,弾性限以下の一軸応力を作用させながら時効し,その後,無負荷状態で時効を行ったところ,引張時効した試験片は伸張し,圧縮時効を行ったものでは収縮することを初めて明らかにした.これにより,時効初期の応力状態の違いが,後の変形挙動を支配することも明らかとなった.
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