Si(111)-(7x7)表面上に高温でAuを蒸着すると(√3x√3)-R30°(以下γ√3)周期の吸着構造が出現する。さらに、この表面を徐冷するとAu/Si(111)-(6x6)表面へと構造変化する。しかしながら、この変化が相転移なのか、それとも単なる構造変化なのかはもちろんのこと、それらの表面の原子配列についても全くわかっていない。そこで、本研究では、こうした構造変化に起因するダイナミクスを追跡しつつ、3次元の原子配列をも決定できる反射高速電子回折法を中心に据え、他にもオージェ電子分光法や走査トンネル顕微鏡法など複数の手法を組み合わせた多角的な解析により、これらの吸着表面の原子配列の決定および成長ダイナミクスの解明を狙う。本年度はまずγ√3表面形成過程の評価、およびγ√3、(6x6)両表面上でのAuの成長ダイナミクスの評価を行った。その結果、以下の3点が明らかとなった。 1.γ√3構造は、Au蒸着量0.6MLから形成が始まり、1.0MLでもっとも広領域に存在する。 2.1.0MLを越えて蒸着したAuは吸着構造の形成に関与しない。これは、Auの成長がγ√3表面上では起こりにくいことを意味する。 3.(6x6)表面に室温でAuを蒸着すると、2次元クラスター→2次元粒子→2次元多結晶膜が順次形成される。 このように本系では、基板表面の性状に依存して蒸着物質との反応性が大きく変化する。今後はその起源を明らかにするために、これら表面の作製条件を確立し、原子配列を決定することを狙う。
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