研究概要 |
鋳造組織予測のための合金データベースの構築を目的として,今年度はAl基合金の一方向凝固実験を行った.得られた組織の柱状晶-等軸晶遷移位置が再現できるように,確率モデルに基づく凝固組織形成シミュレーションを行い,異質核生成頻度を表す核生成パラメータを決定した. 1.実験方法 内径32mm,高さ230mmのイソライトれんが製の円筒状鋳型を980Kに予熱し,水冷銅板チル上に鋳型を設置して試料溶湯を鋳込み,チルから上方に一方向凝固させた.チルから高さ方向に設置した6本の熱電対により,試料内の測温を行った.凝固後縦断面を研磨,エッチングして凝固組織を観察した.用いた試料はAl基合金の基本組成であるAl-Si二元合金を対象とし,Si組成を1%〜12.6%(共晶組成)に変化させた.続いて,多成分系であるAl基実用合金の一方向凝固実験を行った. 2.実験結果 2.1 組織形態:試料はチルから柱状晶が発達し,試料上部で等軸晶領域に遷移した.Al基二元合金では,Si濃度の増加と共に等軸晶領域が拡大したが,さらに高Si組成になると減少した.AC4C,AC8C等の実用合金においても柱状晶から等軸晶に遷移する凝固組織形態が観察された. 2.2 熱伝達係数 : 組織予測シミュレーションのために,試料の伝熱解析を行った.試料の実測温度を再現するために,チル/試料間の熱伝達係数を逆解析により求めた.その結果,熱伝達係数は経過時間と共に減少し,またSi濃度の増加と共に変化した 3.核生成パラメータ 異質核生成の確率が過冷度のべき乗に比例すると仮定したモデルを用いて鋳造組織形成シミュレーションを行い,実験により得られた組織の再現を行った.その結果,核生成頻度を表すべき乗指数は,Al-Si二元合金ではSi濃度が1〜9%の範囲で約5〜12に変化し,過冷度の2次式で表される回帰式が得られた.この核生成パラメータは過熱度では変化しないことから,各合金の組成の関数として核生成パラメータを決定し,データベース化することが可能であるとの知見を得た.多成分である実用合金では,Al-Si二元合金に比較して高い核生成頻度を示すパラメータ値が得られた.
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