研究概要 |
鋳造組織予測のための合金データベースの構築を最終目的として,今年度はデータベース化する際の異質核生成頻度の過冷度に対する形状を表す数式モデルを決定するために,溶融塩フラックス内で合金を分散化し,個々の粒子の過冷度測定実験を行った.また,多成分系合金の凝固伝熱解析のために,熱力学計算を応用したエンタルピー法の開発を行った.さらに,昨年度に引き続き,実用Al基多成分系合金の一方向凝固実験を行い,柱状晶-等軸晶遷移位置を凝固組織形成シミュレーションで再現することにより,異質核生成頻度を表す核生成パラメータを決定し,データベース化のためのデータの蓄積を行った.これにより,合金データベース開発のための基礎的手法の確立を行った. 1.過冷度測定実験 純Al,Al-Cu,Al-Si,Al-Fe,Al-Ti合金を試料として,K_2SO_4-Li_2SO_4溶融塩内で分散撹拌し,小粒子に分割し,各粒子の過冷度測定実験を行った.その結果,核生成頻度は過冷度の増加とともに増加し,高過冷度では減少した.これにより,通常の鋳造条件では,過冷度のべき乗に比例するモデルの適用が可能であることを確認した. 2.熱力学の応用による多成分合金の凝固伝熱解析 本研究では,各実用合金の一方向凝固実験と組織形成シミュレーションとを比較することにより,各合金の異質核生成頻度を評価する.そのためには多成分系実用合金の凝固時の潜熱等の物性値が必要となるが,従来その決定は困難であった.そこで,熱力学計算ソフトThermoCalcを応用した多成分系のエンタルピー法を用いた凝固伝熱解析法を開発した.これにより,多成分系合金の温度場を正確に再現し,実験結果と比較することを可能にした. 3.実用合金の核生成頻度の評価 昨年度に続き,実用合金の一方向凝固実験を行った.今年度は12種類の実用合金を対象とした.また,試料上部での核生成の影響(シャワリング)の影響を防止するために,上部を加熱した一方向凝固実験も行った.この実験では柱状晶-等軸晶-柱状晶遷移が観察された.実験で得られた柱状晶-等軸晶遷移を再現することにより,過冷度のべき乗で表した異質核生成パラメータを決定した.
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