研究概要 |
当初の計画通り,酸化銅基スラグによる銅スクラップからの不純物成分の除去機構の解明を目指し,以下の研究を行った。本年度は,対象スラグをCu_2O単味,Cu_2O-CaO系とし,対象不純物をSn,Co,Pb,Znとした。 (1)酸化銅基スラグと平衡する溶銅中の酸素溶解度ならびに酸素溶解速度の測定実験 (2)の不純物除去速度の測定実験の条件を設定するに当たり,本系スラグと平衡する溶銅中の酸素溶解度を求める必要がある。また本プロセスでは,溶銅中へ酸素が溶解することが避けられない。そこで,不純物除去速度の測定に先立ち,(1)の実験を行った。マスフローコントローラ(新規購入)にて流量を制御したArガス気流中で,酸化銅基スラグ融体と種々の組成の溶融Cu-O合金を共存させ,酸素溶解度および酸素溶解速度を測定した。実験には管状炭化ケイ素電気炉(新規購入)を用い,マルチ入力ディジタル温度計(新規購入)を用いて実験温度を1573Kに制御した。 この実験から,Cu_2O単味スラグと平衡する溶銅の酸素溶解度としては,過去に報告されている値とは大きく異なる値が得られた。また,初期酸素濃度が非常に低い場合は,高い場合に比べて実験開始段階において酸素の溶解が非常に遅くなることが分かった。 (2)酸化銅基スラグによる溶銅中不純物除去速度の測定実験 (1)の実験と同一の設備を用いて,本プロセスにおける溶銅中不純物成分の除去速度を測定した。実験温度・雰囲気は(1)の実験と同じく,それぞれ1573K・Arガス気流中とした。なお,Znを対象不純物とした実験では,必要に応じて撹拌装置(新規購入)を用い適宜試料の撹拌を行った。 (1),(2)の結果を基に,本プロセスにおける溶銅中不純物(Sn,Co,Pb)および酸素の物質移動速度の解析を,1次速度式を用いて行い,不純物除去機構ならびに酸素溶解機構について検討した。除去速度はPb,Co,Snの順で速くなるという結果が得られ,初期酸素濃度が高い条件ではこの速度がスラグ組成,初期不純物濃度,初期酸素濃度に依らず一定であることを明らかにした。また,Znの除去挙動はSn,Co,Pbの場合とは大きく異なることが分かった。
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