本研究は、下水汚泥の減容、無害化処理法の一つであるパラ・エコ法で生成する鉄メタルから、クロムやリンを回収するプロセスを構築することが目的である。特に近年の下水汚泥の減容処理は、鉄メタルにリンや重金属類を吸収させることが主流になりつつあり、生成メタルの処理法に対する関心は高く、本研究は特殊条件下で生成する人工資源を対象としてはいるが普遍性のある基礎研究である。 前年度に引き続き、クロムの電解製錬工業の経験を生かして、濃硫酸による高温強酸化浸出を行った。遊星ミルによる前処理、硫酸に対する食塩添加などの方法により、浸出率の向上を図ることが出来たが、工業的な応用に適合するような十分な成果を得ることは出来なかった。回転電極装置による電気化学手法による溶解速度マップ作製を行った結果、硫酸溶媒を用いる強酸化性条件での工業的な全溶解には、ソーダ焙焼などの予備処理が必要であるとの結果を得ている。一方クロムを多量に含む鉄合金の溶解に対しては、食塩飽和塩酸による、還元性雰囲気での活性溶解の可能性に着目し、新しい溶解手法の研究を開始した。この方法によるとリンを気相状態で分離できる可能性があり、リンの分離回収にとって、理想的条件となることが期待できる。この研究の対象メタルとして、クロム、リン、のほかに同じパラ・エコ法で生成するチタン、銅などを含有する試料に対する処理法を合わせて検討した。 われわれの先行研究の結果として、安価な酸化剤であるSO_2+O_2ガスによる酸化、特に亜リン酸のリン酸への酸化に関する研究成果を「資源と素材誌(資源・素材学会誌)」に2報に分けて発表した。
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