研究概要 |
3種類のエポキシ樹脂を成形し、硝酸水溶液中で分解させた。樹脂はメンタンジアミン硬化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、同ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ジアミノジフェニルメタン(DDM)硬化テトラグリシジルジアミノジフェニルメタン(TGDDM)型エポキシ樹脂の3種類を用い、硝酸の濃度は4mol/lおよび6mol/lの2種類とした。分解温度は80℃とした。硝酸以外の酸とアルカリ水溶液については分解速度が非常に遅かった。分解生成物について、サイズ排除クロマトグラフィによる分子量分布の測定と、FT-IRによる化学構造の分析を行った。その結果、ビスフェノールA型エポキシ樹脂に関しては、架橋部のC-N結合が切断され、モノマー相当化合物が回収された。この化合物は、硝酸水溶液を酢酸エチルで抽出することで得られる。また、主鎖の開裂とニトロ化により2,4,6-トリニトロフェノールが生成していることが明らかになった。ビスフェノールF型エポキシ樹脂に関しては、基本的にはビスフェノールA型と同様であったが、硝酸が架橋部のC-N結合をより選択的に攻撃したため、モノマー相当化合物の収率がより大きかった。TGDDM型エポキシ樹脂に関しては、その化学構造の対称性・均一性から、ほぼ単一の化合物が分解生成物として回収され、分析の結果2,4,6-トリニトロアニリンであることが明らかになった。研究結果を総合的に判断した結果、ビスフェノールF型エポキシ樹脂の4mol/l硝酸水溶液中での分解が最も適していると結論付けられた。この場合について実質収率を求めたところ約83%という非常に高い値が得られ、リサイクルの方法として極めて実用的な手法であることを明らかにした。
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