磁化力は磁束密度の二乗の勾配および、物質の磁化率に比例して作用する力であるが、最近の高温超伝導電磁石の発達に伴い、注目を浴びるようになってきた。これは強磁場が比較的、容易に得られるようになってきたからである。この力は磁場の勾配に依存するので、従来型の電磁石でも4極を対向する磁石として作用させることにより、大きな勾配磁場を与えることになる。そこで、本研究では、現有4極電磁石を上下左右に配置し、その中央に、6.4cm立方のアクリル容器を設置し、一面を加熱し、対抗面を冷却し、4側面を断熱という条件にして、空気の自然対流実験を行った。しかし、磁化力の効果を定量的に求めるには、磁化力が弱すぎて測定できなかった。そこで、アクリル容器の上面から加熱し、底面から冷却する配置にして、まず熱伝導状態を生じさせた。その後、磁場を印加し、アクリル容器の上端部に空けた小孔より線香を入れ、可視化を行った。その結果、磁場を加えない時には、線香煙は右上から斜左下へ拡がっていくのに対し、強磁化力場が加わると、まず線香煙は上部加熱面に沿って上部中央に達し、その後、鉛直下方に流れ冷却底面中央付近で左右に拡がるという初めて見る形態をとった。これは繰り返し実験できた。これを理解するために、温度依存磁化力対流のモデル式をまず導いた。磁化力項を若山に習い運動方程式に代入し、さらにキュリーの法則により、磁化率が温度の逆数に比例するという特性を考慮し、自然対流におけるブシネスク近似に相当する変換を行うことにより、極めて明快な浮力モデル式を得ることができた。このモデル式を用い、三次元非定常数値解析を行った。その結果、上方加熱熱伝導場が磁化力の大きさにより、上部加熱面中央から下降流が発生し、下部冷却板上で左右に拡がるという、実験事実に極めて合致する粒子軌跡図を得ることができた。
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