研究概要 |
磁化力による流体の対流攪拌あるいは対流抑制の制御を目指して、以下の問題を解いた。すなわち、円筒容器の上1/3側壁を加熱、下1/3側壁を冷却、中央1/3ならびに上下ぶたを断熱し、容器と同軸に一本の磁場発生用電流コイルを想定し、このコイルを容器軸方向種々の位置に設定した。流体は、常圧空気(常磁性体)とした。計算条件は磁場強さを表わす無次元数_γRa=β(θ_h-θ_c)r_0^2χ_<m0>^b_0^2/(ανρ_0μ_m)=1.232×10^4,プラントル数Pr=0.71,コイル位置Z_c=0.0〜3.0とした。コイルを容器下面に置いた場合(Z_c=0),極く弱い対流が発生し、平均ヌセルト数Nu≒1.0となった。それに対し、Z_c=2.0の時Nu=6.5,Z_c=3.0の時Nu=1.6となった。これは磁化率の温度依存性によることが明らかになった。この結果、無重力空間においてさえ、磁場を用いることにより、回転機器を用いることなく、通常の空気を攪拌したり、熱伝達を促進したりできることが予測された。 一方、物質の多くは磁場に反撥する反磁性体である。そこで次に、この代表的物質として水を取り上げた。反磁性流体の無次元磁化率は密度と磁化率(一定)の積で与えられ、密度が温度に逆比例する特性により磁化力も温度に依存する。これを流体の運動方程式に考慮し、モデル式を導いた。対象とした系は高さHに対し直径3Hの円筒容器とし、下面加熱、上面冷却、側面断熱とした。この容器を超伝導電磁石の磁場発生空間(ボア)に設置したものと想定した。容器高さHの6倍の直径の一本のコイルを想定し、コイル中心より上下方±3.755Hの位置に容器中心がくるように設置した。これに磁場が作用した問題はBraithwaite et al.[Nature,1991]により実験結果が発表されている。上記系を数値解析し、種々の強さの磁場下での収束解を得た。彼等の提案した磁気レイリー数Ra_mに対し、Nuを図示し、古典的なSilvestonの実験データと比較し良好な一致を得、我々のモデル式、解析法が確かめられた。彼らの実験データはSilvestonのデータより約50%下方へずれ、実験誤差が顕著であることが伺われた。
|