研究概要 |
本研究は、複数の結晶化成分が共に過飽和状態にある系で、一方の結晶を成長させている際に他の結晶化成分を核発生させた場合に得られる、互いの結晶が合体(合一)した複合結晶の生成機構を解明するものである。まず、塩化ナトリウム-塩化カリウム-水系3成分溶液中で塩化ナトリウム基盤結晶上に複合結晶を生成させ、その成長機構を検討した。走査型電子顕微鏡(SEM)および電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて得られた結晶を解析したところ、塩化ナトリウム基盤結晶上に塩化カリウム結晶が析出した複合結晶が形成され、その合一部分は四角錐のような形状をしていることが確認された。さらに、得られた複合結晶の界面付近の劈開面を走査型プローブ顕微鏡(AFM)により観察したところ、界面に幅約1μm程度の溝があることが示された。次に、塩化ナトリウム-塩化カリウム-メタノール系で複合結晶を生成し、塩化ナトリウム-塩化カリウム間の界面を顕微フーリエ変換赤外分光計で分析し、その界面構造を検討した。その結果、界面部分からはメタノールが検出されず、Na,K,Clのみにより形成されていることがわかった。また、複合結晶の生成現象の分子レベルからの解明を目的として、分子動力学法により塩化ナトリウム-塩化カリウム-水系の結晶-溶液間の界面構造を検討した。結晶相が塩化ナトリウム、溶液相が三成分溶液である条件で計算を行ったところ、界面付近にNa^+,K^+,Cl^-イオンが多く分布することが示された。これより、塩化ナトリウム結晶上に塩化カリウム結晶が生成する可能性があることがわかった。
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