平成12年度は交付申請書に記載したように、オリゴペプチド誘導体における不斉認識部位形成可能な最少アミノ酸残基数の探索ならびにその不斉認識能とアミノ酸残基数との関係に関して検討を行った。不斉認識部位形成候補物質としてのオリゴペプチド誘導体として1から8量体のアミノ酸残基より構成されるオリゴペプチド誘導体を固相法により調製した。 これらのオリゴペプチド誘導体が自発的に自己組織化して不斉認識部位を形成することは考え難い。このことより、得られたこれら8種類のオリゴペプチド誘導体に本研究者が1994年より世界に先駆けて提案している、簡易分子インプリント法を適用することにより、それらをナノスケールサイズの不斉認識部位を有する鋳型高分子へと変換した。吸着選択性の検討結果より、構成アミノ酸残基数4を頂点に、その構成アミノ酸残基数が減少しても、また増加してもその不斉認識能は低下した。不斉認識部位の存在の確認において最も有効な特性解析法と考えられる吸着等温線から得られる結果も、吸着選択性を反映する結果が得られた。すなわち、構成アミノ残残基数3、4、5、6量体より得られる鋳型材料中には基質特異性を示す不斉認識部位が存在していることが明らかになった。また、鋳型膜内に形成された不斉認識部位と標的分子との間の親和定数を見積もった結果、構成アミノ酸残基数4より誘導される不斉認識部位が最も高い親和定数を与えることをも明らかにした。
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