平成13年度は交付申請書に記載したように、さらに高い新和定数を示す不斉認識部位をオリゴペプチド誘導体より得ることを目的に、二本鎖オリゴペプチド誘導体を不斉認識部位形成候補物質として採用することにした。その観点より、ヒンジ部にリシン残基を用い、その2つのアミノ基より、それぞれオリゴペプチド誘導体を伸長させることにより、ピンセット型のオリゴペプチド誘導体、換言すれば、二本鎖オリゴペプチド誘導体をペプチド固相法により新たに調製した。二本鎖オリゴペプチド誘導体を構成するアミノ酸残基としてE-、DE-、IDE-、DIDE-なる定序配列をもつ1〜4量体を選んだ。これらにBoc-D-TrpあるいはBoc-L-Trpを鋳型分子として採用し、簡易分子インプリント法を適用することにより、新たに調製された二本鎖オリゴペプチド誘導体を不斉認識部位へと変換した。従来とは異なり、形成された不斉認識部位の光学分割能は用いた鋳型分子の絶対配置に依存した。すなわち、D-体の鋳型分子を用いることによりD-認識部位が形成され、また、L-体認識部位はBoc-L-Trpを鋳型分子として採用することにより形成された。また、その基質に対する親和性は、対応する一本鎖のそれと比較して向上した。例えば、4量体の場合、一本鎖の親和定数は9.6×10^3mol^<-1>dm^3であったのが、二本鎖とすることにより1.44×l0^4 mol^<-1> dm^3へと増加した。
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