研究概要 |
酸化チタンはバンドギャップ以上の紫外光で,結晶表面に正孔と呼ばれる活性種と溶液中に酸化能の高いOHラジカルが生成し,直接または間接的に有機物を分解することが知られている。光触媒反応は,酸化チタン粒子を液中に懸濁させる方法や,無孔性基材上へのコーティング膜などとして研究されているが,本研究では,多孔性チタニア膜を作製し,透過を伴う光触媒膜型反応器を提案する。このシステムでは,ナノ細孔内に対流により輸送される有機物は,細孔内に高濃度に存在するOHラジカルにより分解・除去されると考えられる。有機物の分子量と膜細孔径に応じて,細孔を透過しながら低分子溶質を分解し,浄化された透過液を得ることが期待できる。 具体的には,平均細孔径1.5および5nmの貫通孔を有するチタニア膜をゾルゲル法で作製し,有機物質(トリクロロエチレン,メチレンブルー)の光触媒反応に用いた。濃度1ppmのトリクロロエチレン水溶液を供給した場合,0.05ppm以下の膜透過液を得ることができ,分解率は95%以上にも達することを明らかとした。膜触媒特性に与える因子の検討を行った結果,圧力の増加にともない,膜透過液濃度は増加,すなわち,分解率は低下した。これは,細孔内滞留時間の低下によると考えられる。また,攪拌数および供給液濃度の増大に伴い,分解率は低下する傾向を示した。 さらに,多孔性膜を膜表面での反応部分と透過しながら分解する細孔部分に分割することで,ナノ細孔透過型光触媒反応のモデル化を行なった。提案したモデルは,トリクロロエチレンの分解率の濃度依存性,圧力依存性,攪拌数依存性を比較的良く表現できることを明らかとした。
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