研究概要 |
ナノ集合体である逆ミセルを利用することによって,生体分子は有機溶媒から保護され,本来の機能を非水媒体中においても発現することができる.本研究では、この逆ミセルが、タンパク質やDNAなどの生体分子を選択的に取り込む分子集合素子として機能することを明らかにした。 逆ミセルによるタンパク質分離は,選択的な抽出と定量的な逆抽出(回収)操作によって構成される.単なる可溶化とは異なり,逆ミセル相へ抽出されるための駆動力が必要であり,抽出・逆抽出機構に関する知見は極めて重要である.アニオン性の親水基を有する界面活性剤の場合,カチオン性を帯びたタンパク質に対して,強い抽出能力を示す.そのため,タンパク質の抽出効率は水相のpHに強く依存する.タンパク質の有する等電点より低いpHの水相では,そのタンパク質はカチオン性を帯びており,極めて効率良く逆ミセル相中へ抽出される.逆に,等電点以上のpHの水相では,タンパク質がアニオン性を帯び,界面活性剤との静電的な反発のため抽出は起こらない.このように等電点を境に抽出のON-OFF制御が可能であり,異なる等電点をもつ複数のタンパク質を分離することが可能となった. さらに様々なタイプの界面活性剤を用いてDNA抽出の検討を行った結果,2本のアルキル鎖を有するカチオン性界面活性剤でほぼ完全にDNAを抽出できることを明らかにした.また,DNA抽出はタンパク質抽出の場合と同様,水溶液中に存在する塩濃度にも大きな影響を受けた.その程度はタンパク質の場合に比べて著しく,特に1価の陽イオンに比べてカルシウムのような2価の陽イオンを含む塩に対しては極めて敏感であった.DNAの抽出においても,抽出の主な推進力は,界面活性剤との静電的相互作用であることを明らかにした.
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