触媒の寿命評価および活性劣化機構の解明:当初、本触媒の活性劣化は反応中に析出・堆積する炭素(コーキング)によるものと推測していた。しかし、本研究の結果、触媒活性劣化の原因は触媒の反応中におけるモリブデン種の飛散・損失にあることが判明した。反応は水蒸気過剰雰囲気下、600℃という高温で行われるため触楳中のモリブデン種(酸化モリブデン)の一部が昇華する。したがって、触媒の活性劣化を改善し、触媒の長寿命化を促進するためには、反応中におけるモリブデン種の昇華・損失を抑制する技術を開発しなければならない。本研究ではシリカ外表面に担持されたモリブデン種の飛散・損失が特に著しいことから、シリカ細孔内部にモリブデン種が担持されるよう、シリカ担体の細孔構造を設計することの重要性を確認した。 触媒上におけるメタン活性化機構の解明:本研究ではシリカ担持モリブド珪酸(SMA ; H_4SiMo_<12>O_<40>)を触媒として使用している。SMAの特徴の一つは1分子内に4個のプロトン(H^+)を有していることである。今回はKOH処理をしたシリカ担体にSMAを担持することにより、SMA中のH^+をK^+で置換した触媒を調製しメタン部分酸化反応に用いた。しかし、K^+置換SMAを担持したシリカ触媒では反応が進行せず、メタン転化率が著しく低減した。このことから、メタン部分酸化の第一段階であるメタンの活性化にはSMA中のプロトンが重要な役割を担っているものと結論された。プロトンによるメタンの活性化とは、触媒表面にCH_5+吸着種を生成することであると推測している。
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