水系における接着タンパク質を用いる生物接着模倣システムの創製と生物機能材料工学

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12450330
• 研究機関: 信州大学
• 研究代表者: 山本 浩之 信州大学, 繊維学部, 教授 (60021151)
• 研究分担者: 山田 真路 信州大学, 繊維学部, 非常勤研究員 ; 大川 浩作 信州大学, 繊維学部, 助手 (60291390)
• キーワード: 海洋接着タンパク質 / タンパク質合成 / 水不溶化機構 / 濡れ特性 / 界面接着プロセス / バイオアドヒーシブ / 生物模倣複合材料 / 生物工学

研究概要

海洋中の大型付着動物フジツボ、イガイ類などの流水中での付着・接着の基礎科学の解明とその次世紀バイオテクノロジーとしての素材開発に付き研究した。今年度の研究成果を下に列挙する。
1 水溶性タンパク質が不溶化する途中に興味深いゲルの段階を経るのでバイオヒドロゲルについて合成、膨潤-収縮などの物理的性質イオンや低分子化合物吸着などの化学的性質、生分解特性などについて広範に研究し、水溶性のタンパク質溶液と水不溶の接着物質固体との中間のゲルについての知見を集積した。
2 海洋接着タンパク質の表面科学を物質と理論との両面から系統的に把握し、医療目のバイオ接着タンパク質複合材料系の調整および付着機構の解明に基礎をおいた生物工学材料システムを作成し、海洋接着タンパク質の次世代マテリアルとして生きている白豚の切開部への接着を試み良好な知見を得た。
3 海洋接着タンパク質はコラーゲンと複合して高次階層構造を形成し2000kgf/cm2の極めて強い物理的強度と安定な化学的・生化学的特性を発揮している。多糖および合成タンパク質の複合材料系を創製し接着タンパク質を用いてバイオミメチックな超強度材料の作成を作成した。
4 国内に生息している付着生物である二枚貝および、甲殻類を飼育し、シランカップリング剤などを用いて表面処理したガラス・金属などの無機材料およびシリコン基盤などの高分子材料への水中付着生物(フジツボ、海産イガイ類・淡水産カワヒバリガイ)の付着挙動の観察し、付着生物が忌避する材料表面を作成した。次いで、生物が付着忌避する基盤材料と表面自由エネルギーの関連を成分分けの観点から検討し、接着タンパク質のアミノ酸配列と付着の相関について興味深い知見を得た。
上記の項目1-4の成果は別紙のように国内外の学術論文に報告した。

研究成果

• [文献書誌] H.Tatehata: "Oxidative reaction and conformational studies on synthetic sequential polypeptides of mussel adhesive proteins"Current Trends in Polymer Science. 5. 91-96 (2000)
• [文献書誌] Y.Matsui: "Attachment strength of Limnoperna fortunei on substrates and their surface properties"Biofouling. 17(1). 29-39 (2001)
• [文献書誌] H.Tatehata: "Tissue Adhesive Using Synthetic Model Adhesive Proteins Inspired by the Marine Mussel"J. Adhesion Sci. Technol.. 15(9). 1003-1013 (2001)
• [文献書誌] M.Yamada: "Characterization and formation mechanism of water-insoluble DNA- matrix induced by UV irradiation"Nucleic Acids Suppi.. 1. 205-206 (2001)
• [文献書誌] K.Ohkawa: "Lysyl oxidase-catalyzed cross-linkin and insolubilization reactions of Lys-containing polypeptides and synthetic adhesive proteins"Biomacromolecules. 2(3). 773-779 (2001)
• [文献書誌] K.Nagaya.: "Attachment Strength of an Adhesive Nuisance Mussel, Limnoperna fortunei, against Water Flow."Biofouling. 17. 263-274 (2001)
• [文献書誌] K.Ohkawa: "Synthesis and Surface Chemical Properties of Adhesive Protein of the Asian freshwater Mussel, Limnoperna fortunei"Macromolecular Bioscience. 1(9). 376-386 (2001)
• [文献書誌] M.Yamada: "Preparation and characterization of DNA-films induced by UV irradiation"Chem. European J.. (in press). (2001)
• [文献書誌] 大川浩作: "自然に学ぶ複合材料の創成"日本接着学会誌. 37(4). 157-163 (2001)
• [文献書誌] 山本浩之: "食肉用接着剤 -リン酸三カリウムと酵素-"接着. 45(5). 220-224 (2001)
• [文献書誌] H.Yamamoto: "Encyclopedia of Surface and Colloid Science"A. Hubbard, Ed., Marcel Dekker, Inc., New York (USA)(in press). (2002)