研究課題/領域番号 |
12450332
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
中野 秀雄 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 助教授 (00237348)
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研究分担者 |
民谷 栄一 北陸先端科学技術大学院大学, 材料科学研究科, 教授 (60179893)
山根 恒夫 名古屋大学, 大学院・生命農学研究科, 教授 (70026102)
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キーワード | 無細胞タンパク質合成系 / 一分子PCR / GFP / ライブラリー / 均一性 / 蛍光特性 / マイクロアレイ / リパーゼ |
研究概要 |
タンパク質およびペプチドのアミノ酸配列をコードするDNA分子集団を希釈し、マイクロリアクタ(ウェル)上に1分子/リアクタになるよう分散させ、そのDNA1分子をPCRにより増幅、続けて無細胞転写翻訳共役反応を行わせることで、タンパク質・ペプチド分子ライブラリを構築する技術を開発することを目的として以下のような研究を行った。 1)無細胞タンパク質合成系によるタンパク質・ペプチドの合成に関する検討:クラゲ蛍光タンパク質(GFPuv)の蛍光中心である66位と3次元的に接する148位と205位にランダム変異を導入し、一分子PCRにより384穴プレート上でクローン化し、スクリーニングを行ったところ、数種の元にしたGFPuvとは蛍光特性が異なるものが得られた。さらに得られた変異体の中にはGFPuvよりも蛍光の強い変異体が存在した。この変異についてはこれまでのところ報告例がなく、新規なものであると考えている。さらにそれらを大腸菌にクローニングし、大量発現、精製し、その性質を詳細に調べた。その結果分子当たりの蛍光強度が強くなっていることが明らかとなった。特にpH5付近での蛍光強度は、野生型に比べるとかなり高く、細胞内pHセンサーなどへの応用が期待される。 すなわちこれらの実験結果より全く生細胞を用いずにマイクロプレート上だけの反応で、優れた性質の蛋白質を作り出せることを示すことができた。 2)ライブラリーの均一性に関する研究:通常機能を指標にしてアッセイする場合、蛋白質ライブラリーの合成量の均一性は重要である。合成量のばらつきが大きい場合、有効な変異体をノイズの中から選び出すのは困難だからである。そこで本手法によライブラリーの均一性について検討した。まず一分子PCRによる増幅DNAの均一性を調べたところ、その合成量のRSDは約20%であった。つぎにこれを鋳型とした蛋白質の合成量のRSDは約8%であった。これは同じ蛋白質の遺伝子を大腸菌に導入し、ライブラリーを作製した際に得られたRSD24%より、はるかに均一性に優れていた。このことは本ライブラリー構築法により、有効な変異体を効率よく選び出せることを示している。 3)リパーゼの変異ライブラリーの検討:リパーゼの基質結合領域にPCRによるコンビナトリアル変異を導入し、マイクロプレート上で無細胞タンパク質合成により変異蛋白質を多数作製した。様々な炭素鎖を持つ基質に対する活性を調べたところ、特異性のことなるリパーゼが数種得られた。これにより基質結合部位を予測し、そこにセミランダム変異を与えることのよって、効率的に基質特異性の変わった酵素の獲得が可能であることを示すことができた。
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