本申請研究ではラングミュアー・ブロジェット(LB)法によりpHや酸素などの外部刺激応答性分子と光機能性分子からなる高分子ナノ組織体を高度に組織化し、光導波路分光法と組み合わせることにより、高分子ナノ組織体の界面における静的あるいは動的挙動を評価するとともに全く新規な光分子センシングデバイスの開発を目的としている。当該年度では以下のことが明らかとなった。 1)光導波路分光法の開発と性能評価 石英光導波路上にアントラセン高分子LB膜を累積し、界面・表面分光計により、アントラセン高分子LB膜1層の吸収スペクトルの測定を行った。透過型吸収測定装置と比較することにより、光導波路分光法の性能について検討を行った。従来型の透過型分光法に比べ、200倍の感度が得られること、また紫外光領域の吸収スペクトルを高S/N比で測定できることが明らかとなった。アントラセン高分子LB膜の光架橋反応をin situ観測し、層構造との関係を明らかにすることに成功した。 2)高分子LB膜のポジ型フォトパターン形成過程の検討 光分解性高分子LB膜のポジ型フォトパターニングについて表面プラズモン共鳴法により検討を行った。ガラス基板上に金、銀の金属薄膜を蒸着し、種々の高分子LB膜を累積した。フォトパターン形成過程と耐エッチング性の評価法としてこの手法が有効であることが示された。 3)電荷移動錯体を利用した光スイッチ素子の開発 ピレン高分子LB膜と電子ドナー性およびアクセプター性の高分子LB膜を作成した。電子ドナー性、アクセプター性いずれのLB膜もピレンの蛍光を効率よく消光し、これは層間での電荷移動錯体形成に基づく。このLB膜を用いて、銀表面上に積層体を構築し、表面プラズモン共鳴法と組み合わせた光スイッチ素子を開発した。350nmのランプ光をポンプ光、441.6nmのHe-Cdレーザー光をモニター光として可逆的なスイッチングを行うことに成功した。
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