研究概要 |
酸素発生型光合成生物の光化学系I反応中心(P700)近傍に1〜2分子存在するクロロフィル(Chl)a'の機能サイト解明を目指し,Chl類およびフィロキノン(二次電子受容体)量のHPLC計測とP700の分光学的定量を併用した実験的アプローチにより,前年度まではおもに高等植物とラン藻についてChl a'/P700=1の化学量論比を確認してきた。 本年度は,ラン藻や緑藻Chlamydomonas reinhardtiiを試料とした計測により上記の量論比を確認したほか,新たに紅藻Porphyridium purpureumおよびCyanidium caldariumの機能色素組成を検討した。その結果,いずれの紅藻でもChl a'/P700=1の量論比を確認した。以上の実験的証拠と,10種類以上に及ぶ酸素発生型光合成生物の系Iコアを構成するペプチド鎖のアミノ酸シーケンスの同等性がきわめて高いという文献的証拠から,Chl a'が普遍的に系Iコアで必須部品として機能し,しかもP700の構成成分であることがほぼ確実になったといえる。 なお,こうした計測化学的アプローチの副産物として,新しい系I二次電子受容体の発見があった。緑藻C. reinhardtiiとChlorella vulgarisに検出した5'-OH誘導体(昨年度)に加え,紅藻C. caldariumの二次電子受容体もPhQではなく,今まで報告されていないメナキノン-4だと判明した。 最終年度となる本年度は,以上の結果を原著論文や総合論文にとりまとめた。
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