研究概要 |
窒素の吸蔵放出能は、結晶格子中における窒素の吸蔵されるサイトの大きさや窒素周囲の金属の電気陰性度に由来するサイトの安定性などに左右されることが考えられる。そこで本年度は、CeFe_7のFeサイトを金属半径および電気陰性度の異なる他の遷移金属(Mn, Ni)で置換固溶することで窒素の占有サイトのサイズや窒素周囲の環境を変化させ、窒素の吸蔵放出能の違いを評価した。 Ce(Fe_<0.9>TM_<0.1>)_7 (TM=Mn, Fe, Ni)のXRD測定から、各試料の回折パターンは主に菱面体晶のRFe_7型構造のそれとして指数付けされた。しかし、各試料とも作製時の包晶反応により若干量のRFe_2相の析出が見られた。Ce(Fe_<0.9>TM_<0.1>)_7 (TM=Mn, Fe, Ni)について、各試料の格子定数を最小二乗法より求めた結果、置換した金属の大きさに従って(Ni>Fe>Mn)格子定数の変化が見られたことから置換型の固溶体を形成していることが確認された。 次に、各試料について窒素の吸蔵放出能を評価したところ、置換元素の電気陰性度の違いから、陰性度が最も低いMn置換の試料が窒素との親和性が強く、吸蔵量が最も多くなるものと期待されたが、結果として、大きな窒素吸蔵サイトを持つNi置換の試料において良好な窒素吸蔵能が得られた。ただし、窒素放出能についてはMn置換の試料において良好な結果が得られた。これに対し、窒素との親和性の低いNi置換した試料の窒素放出能は置換を行っていないCeFe_7と同程度であった。以上の結果から、窒素吸蔵性金属間化合物の窒素吸蔵放出能は窒素の収容されるサイトのサイズに大いに依存するものと考えられ、水素吸蔵合金に見られる水素収容サイトの大きさと生成する金属水素化物の安定性との相関関係に類似した挙動が観測された。
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